ゴア前米国副大統領の講演
先週17日に、アル・ゴア前副大統領がワシントンで地球温暖化課題に対して、講演を行いました。私は、人類史上に残る演説だったと、思います。また、そうならなければならない、大変重要なメッセージであったと思います。英語ですが、ぜひぜひトライしてみてください。下記サイトでは、スピーチの全文も掲載されています。
http://www.climatecrisis.org/
地球温暖化問題については、人類はもう後戻りできない最終ラインを超えつつあるとも言われています。地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量に関しては、彼の「不都合な真実」によると、米国一国で世界の30%以上を排出しているそうです。その米国が、今こそ変わらなければならない。これからの10年で、化石燃料による発電から、太陽発電、風力発電、地熱発電といった二酸化炭素を発生しないエネルギーへ、100%移行しなければならないと、訴えています。現状を鑑みると大変大きな目標に感じますが、これを実現することこそが、地球温暖化を阻止することであり、国家の安全を守ることであり、悪化している経済を再活性化させる、唯一の手段であるとのことです。
「不都合な真実」によると、我々日本の炭素排出量は、世界の3.7%です。しかしながら、一人当たりの排出量を見ると、米国、ロシアに続き、EUに並び、世界平均を2倍以上上回る規模です。我々のエネルギー消費量が、そういった高いレベルだということであり、対岸の課題では全くないと、感じます。
こういった中で、これからの広告業界の役割は何でしょうか? 今後グローバル企業は、環境対策を一層本格化させます。多かれ少なかれ、最強の競争優位戦略となることでしょう。そうした企業の戦略、取り組みを、しっかりと消費者に伝えること。同時に、こうした地球規模の最重要課題に対して、生活者一人ひとりの理解を、正確に啓蒙喚起していくこと。これが、コミュニケーションを誰よりも上手く司る広告業界の、今後最も重要となる務めではないでしょうか? 経済の発展を次の世代に、地球を次の世代に、残していくために。広告の真価が問われることになります。
グーグルに勝つ広告モデル
電通の営業時代の同僚から、執筆した本「グーグルに勝つ広告モデル マスメディアは必要か」(光文社新書)を、1カ月ほど前に貰いました。以来、書店に行く際に気にしていますが、汐留界隈の書店に関しては、平積みしているところが多く、かなりの反響のようです。タイトルに「グーグル」を入れ、また最近流行の新書版のため値段もサイズも手頃です。広告会社出身者として、マーケティング的に絶妙だと思います。
内容は、グーグル対抗策に関するものではなく、インターネット時代が本格化する中で、既存マスメディア、そして広告業界が、いかに変革していくべきかの提言になっています。著者は、広告業界から、ネット広告業界、そしてコンサルティング業界を経験しているため、その提言は、非常に地に足がついたものになっています。4マスメディアならびに広告会社の経営に関わっている方には、必読の書ではないでしょうか。
私が最も共感したところは、12章「コンテンツ論」です。
「今現在、我々が持つクリエイターのイメージは、印刷物やテレビCMや番組といった、ある規定の枠組みの中で、ルールにしたがってコンテンツを作る職人、というものです。しかし今後は、メディアの枠組みそのものを作っていく、そしてその枠組みが市場の文脈の中でどのような利用のされ方をするか素早くセンスして、枠組みとコンテンツの両方を進化させていく、といった能力が、クリエイターに求められるようになるのではないでしょうか。」
クロスメディアでの提案というと、とかくテレビと雑誌とイベントとインターネットを使って、キャンペーンを組み立てようかと、インターネットも、既存メディアに加えた一メディアという位置づけでとらえられがちです。しかし、インターネットは従来のメディアとは本質的な差異が多々あるため、こうした視点だけでは、本当に意味での統合マーケティング活動は具現化できません。著者が指摘するように、本当に成功するマーケティングとは、新たなモデル、仕組みを作り出していくことになるでしょう。
「そう考えていくと、技術とコンテンツの組み合わせをどういうタイミングでリリースしていくのか、というのが、非常に重要な論点になってきます。 ~ ムーアの法則(半導体の集積度が18カ月で倍になるという経験則)が成立する現在では、事業の成否を分ける要素として、タイミングの重要性が高まってきます。つまり、失敗の理由は「早すぎた」か「遅すぎた」かのどちらかで、早すぎた場合は次にいつ出すか、が問題になる、ということです。」
これは、これからの経営上、非常に示唆に富んだ視点だと思います。大きな変革期には、確立された成功モデルというものはなく、柔軟に、そしてしたたかに、事業展開を進める必要があります。
13章「マーケッターに求められるパラダイムシフト」も圧巻です。市場の成熟に伴い、マーケティングは「プロダクトアウト」から「マーケットイン」にシフトしてきたが、広告コミュニケーションは依然として「メディアアウト」の考え方で動いている。Web2.0時代では、情報を広告主や広告会社サイドがコントロールすることはできないし、またそうしようと試みること自体が危険な行為である。今後は、インターネットを新たな価値ある情報を協創(企業と消費者が情報を一緒に生み出すこと)するためのメディアとして考えるべき、とのことです。同感です。
Uniqlockの成功が意味するもの 2
IDCジャパンとフォレスタージャパンが開催したCMOカンファレンスに呼ばれ、昨日参加してきました。数時間のプログラムでしたが、「次世代マーケティングの必須条件 ~ エンゲージメント-顧客との深い関係を築くこと」というタイトルで、非常に内容の濃いカンファレンスでした。ユニクロの勝部さんも登壇され、「世界顧客創造のために方程式」というタイトルで、Uniqlockを初めとして、ユニクロの様々なデジタルマーケティング活動とその戦略について説明されていたので、ここで少し紹介します。
市場背景として、今後は企業も個人も「グローバル化」から逃れることは出来ず、あらゆる情報がどこからでも入手でき、それに伴い情報がフラット化し、実体経済も国境を越えてフラット化が進む。こうした状況下では、消費者間の情報を世界ベースで上手に管理するモデルが必要となる。彼はこれを、Buzz Chain Management Model と呼んでいました。Buzz Chainには、SNSやブログ等のCGM Media、店頭・サンプル・カタログ等のReal Media、そしてTVや新聞、雑誌等のPR Mediaの3つのメディアがあり、これらをうまく使って、消費者間のバズを生み出し、増幅させてしていくことが重要だとのことでした。ここで興味深い視点は、従来のアナログメディアやヤフー等のポータルをPR Mediaと位置付けている点です。これらのメディアを従来のマスメディアという視点で捉えてしまうと、非常にコスト高になってしまうので、あくまでもPRを増幅させるメディアという位置づけで活用しているとのことでした。NHK初め、昨今のユニクロに関する報道とその反響は、まさしくPR Mediaとしての成果の賜物ではないかと感じます。
そして、ユニクロのデジタルマーケティングの全体戦略は、「消費者は広告を見たくないものである」という前提で立案されているそうです。そのためには、広告を作って露出するというよりも、コンテンツと広告の中間的なものを発信していくことが重要である。そうしたものを発信するために、自社メディアを構築する必要があり、ユニクロのウェブサイトは自社メディアという位置付けである。企業自身がメディア化していくために重要なことは、コミュニケーション活動を、期間限定のキャンペーンと捉えず、中長期的な視点で全体を設計する必要がある、との説明でした。
また、Uniqlockのような高品質の動画を円滑に配信するためには、テクノロジーの視点も重要である。Uniqlockは、5秒時報と5秒動画の組み合わせですが、時報表示中に高品質の動画データを配信しているそうです。
上記は、彼のスピーチのほんのダイジェストに過ぎませんが、今後の広告業界にとって、いくつかの重要な示唆を含んでいると感じます。ソーシャルメディアの台頭、それに伴う消費者のメディア接触行動の変化、消費行動の変化は、止まることはないでしょう。今起こっているこれらの変化は、デジタル対アナログというような表層的なものではなく、非常にダイナミックで本質的な市場変化です。既存の広告業界が、どこまでこの変化に対応できるか、新しいソリューションを提供できるようになるか。大きな、大きな、挑戦です。
Uniqlockの成功が意味するもの
ユニクロのUniqlockが、先月のカンヌ国際広告祭で、サイバー部門並びに統合部門でグランプリを受賞したそうです。One Show、Clio Awardsのグランプリに続いての受賞なので、当然といえば当然の結果なのかもしれませんが、世界最高峰の広告賞のグランプリに、日本の作品が選出されたことは、日本人として純粋に嬉しいものです。
このUniqlockに限らず、Jump、Try、UT Loop! 等、最近のユニクロのウェブマーケティング展開の取組みは、目を見張るものがあります。一連の受賞後、ユニクロでウェブキャンペーンを率いている勝部健太郎さん関連の記事も多く見かけるようになりました。その中でも、日経ビジネスのNET Marketing Forum 2008 Springでの講演記事は、今後の広告モデルのあり方について、大変示唆に富んだ内容となっています。アクセスするにはNB Onlineへの登録が必要ですが、ぜひ参照してください。
私が最も強く同感する点は、今後は世界視点が重要になるということ。そして、キャンペーンを企画する際、期間限定の販促活動ととらえず、継続性のある仕組みとして構造化すること。こうした新しいことを具現化するには、従来の組織レイヤーを突き抜ける新しい組織で取り組む必要があるということです。
ちなみにUniqlock、UNIQLO CLOCK、UNIQUE CLOCK、UNITED CLOCKの短縮だそうです。