グーグルに勝つ広告モデル

2008年07月12日

 電通の営業時代の同僚から、執筆した本「グーグルに勝つ広告モデル マスメディアは必要か」(光文社新書)を、1カ月ほど前に貰いました。以来、書店に行く際に気にしていますが、汐留界隈の書店に関しては、平積みしているところが多く、かなりの反響のようです。タイトルに「グーグル」を入れ、また最近流行の新書版のため値段もサイズも手頃です。広告会社出身者として、マーケティング的に絶妙だと思います。

 内容は、グーグル対抗策に関するものではなく、インターネット時代が本格化する中で、既存マスメディア、そして広告業界が、いかに変革していくべきかの提言になっています。著者は、広告業界から、ネット広告業界、そしてコンサルティング業界を経験しているため、その提言は、非常に地に足がついたものになっています。4マスメディアならびに広告会社の経営に関わっている方には、必読の書ではないでしょうか。

 私が最も共感したところは、12章「コンテンツ論」です。

「今現在、我々が持つクリエイターのイメージは、印刷物やテレビCMや番組といった、ある規定の枠組みの中で、ルールにしたがってコンテンツを作る職人、というものです。しかし今後は、メディアの枠組みそのものを作っていく、そしてその枠組みが市場の文脈の中でどのような利用のされ方をするか素早くセンスして、枠組みとコンテンツの両方を進化させていく、といった能力が、クリエイターに求められるようになるのではないでしょうか。」

 クロスメディアでの提案というと、とかくテレビと雑誌とイベントとインターネットを使って、キャンペーンを組み立てようかと、インターネットも、既存メディアに加えた一メディアという位置づけでとらえられがちです。しかし、インターネットは従来のメディアとは本質的な差異が多々あるため、こうした視点だけでは、本当に意味での統合マーケティング活動は具現化できません。著者が指摘するように、本当に成功するマーケティングとは、新たなモデル、仕組みを作り出していくことになるでしょう。
 
「そう考えていくと、技術とコンテンツの組み合わせをどういうタイミングでリリースしていくのか、というのが、非常に重要な論点になってきます。 ~ ムーアの法則(半導体の集積度が18カ月で倍になるという経験則)が成立する現在では、事業の成否を分ける要素として、タイミングの重要性が高まってきます。つまり、失敗の理由は「早すぎた」か「遅すぎた」かのどちらかで、早すぎた場合は次にいつ出すか、が問題になる、ということです。」

 これは、これからの経営上、非常に示唆に富んだ視点だと思います。大きな変革期には、確立された成功モデルというものはなく、柔軟に、そしてしたたかに、事業展開を進める必要があります。

 13章「マーケッターに求められるパラダイムシフト」も圧巻です。市場の成熟に伴い、マーケティングは「プロダクトアウト」から「マーケットイン」にシフトしてきたが、広告コミュニケーションは依然として「メディアアウト」の考え方で動いている。Web2.0時代では、情報を広告主や広告会社サイドがコントロールすることはできないし、またそうしようと試みること自体が危険な行為である。今後は、インターネットを新たな価値ある情報を協創(企業と消費者が情報を一緒に生み出すこと)するためのメディアとして考えるべき、とのことです。同感です。

投稿者: Reo Watanabe 日時: 2008年07月12日 17:12 |パーマリンク